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第三のエサ:光 〜科学的な"照明"&"証明"〜

Dairy Japan「シリーズ/最新技術情報」

第三のエサ:光 〜科学的な

Dairy Japan 2014年1月号掲載記事

【Dairy Japan 2014年1月号掲載記事】
現代の乳牛は、居心地の良い環境の下で、最新の栄養設計に基づき、健康的で、生産性が最大となることを目指して管理されている。しかし、もう一つ、忘れてはならない乳牛の管理要素がある。それは「光」だ。1日のうち明るい時間(照射時間)と明るさ(照度)を人為的に調整することを「光周期コントロール」といい、それにより乳牛の健康と生産性を増進できることが、科学的に証明されている。

北海道十勝管内・浦幌町の塚田牧場は、その光周期コントロールに着目し、日本で初めてオランダ製の「自動制御照明システム」を導入した。本稿では、まず、光周期コントロールの科学的理論を、同システムの開発元であるアグリライト社(オランダ)のプレスリリースから紹介し、次に、塚田牧場のシステムを紹介する。

「光周期コントロール」とは

光の強さ、照射時間、光色
健康的で生産性の高い家畜は、どのような照明が適切なのか? この疑問に答えるには、多くの要素を考慮する必要がある。光の強さ、②照射時間、③光色、これらすべてがアニマルウエルフェア(動物福祉)や牛群の行動に大きく影響を与えるからである。これらの三つの要素のバランスが良くとれている場合、牛群に良い影響を与える。光周期をうまくコントロールすることにより、乳牛においては乳量が6〜15%増加することが、これまでの調査により確かめられている。

搾乳牛は150ルクス以上で16時間
飼料、水、光、空間、空気、休息――これらすべてが高泌乳牛の健康に関わる要素となる。乳牛に対する光の影響に関する研究は、米国ミシガン大学で1978年から行なわれている。適切な照度と光周期は、乳牛の生産性を高め、健康状態を良好にすることが科学的に立証されている。

光による影響で最もよく知られる現象は、乳牛のホルモンと体内リズムに影響を及ぼすことによる生産性の向上であろう。乳牛の「眼」が、通常より長い時間、強い光を感じ取ると、成長ホルモンの産生が促進される。この成長ホルモンは、乳脂肪レベルには影響を与えずに、乳量を6〜15%増加させる働きがある。乳量の増加に伴い、飼料摂取量も増化する。

150〜200ルクスの照度で16時間照らし、その後6〜8時間を暗闇にした場合に、最も良好な結果を得たという調査がある。これはオランダ国立酪農試験場による研究結果と1997年・2000年のダール博士(米国メリーランド大学)らの報告に基づいている

繁殖にも好影響
適切な光周期コントロールは、繁殖にも良い影響を与え、繁殖性の向上と分娩間隔の短縮につながる。高精度の照明は、酪農家の牛群観察にも役立つ。牛舎内のすべての場所で十分な照度があれば、疾病や今まで見えていなかった問題などの早期発見につながる効果も期待できる。適切な照明は、牛群をより健康的に活動的にするともいえる。これに加えて、十分な照度と、陰影のない均一な照射は、牛舎の作業環境の改善にも大きく貢献することとなる。

乳牛にとって5ルクスは暗闇
乳牛は、色の違いを識別することができない。実際に赤色灯を5ルクスで照らしても、乳牛にとっては暗闇でしかない。
光周期コントロールは、先述のとおり、16時間明るくし、その後8時間暗くすることで、搾乳牛と育成牛のどちらにも効果がある。これとは対照的に、乾乳牛では8時間明るくし、その後16時間暗くすることで、乾乳期間中の成長を促進するという効果がある。(オランダ/アグリライト社のプレスリリースより抜粋、株式会社コーンズ・エージー翻訳)

「夕方の搾乳量のほうが多くなった」
北海道十勝郡浦幌町 塚田牧場 塚田 健一様

《概要》
■経産牛130頭、未経産牛85頭
■牧草地100ha
搾乳牛舎フリーストール132ベッド/パラレル式8頭Wミルキングパーラー
年間出荷乳量920t(平成24年度)
従事者:ご本人、妻・靖子様、父・実様、母・千恵子様
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牛の生理にかなっている
塚田牧場は、第一期規模拡大として、平成10年に40頭繋ぎ牛舎から56ベッドのフリーストールに、そして第二期規模拡大として、平成24年に132ベッドのフリーストールを建築した(同年12月稼働)。そして、第二期規模拡大に際し、「自動制御照明システム」(LELY L4C)を導入した。

同システムの販売/施工会社である?コーンズ・エージーから光周期コントロールの話しを聞いたとき、塚田健一さん(39歳)は、「それは牛の生理にかなっている」と真っ先に思ったという。というのは、「乳牛は光に対して、人間とは明らかに感性が違う」と前々から思っていたからだ。朝一番に牛舎に入ったときに、同じ時刻なのに、季節によって、牛達の行動が違うと感じていた。例えば、牛舎の扉を開けた途端に牛達が動き出す季節、逆に、なかなか起きてこない季節、というふうに。「明るさによって牛達の行動や生理は違うのだろう、と思っていた」と塚田さんは言う。

耳標がくっきり見える明るさ
「光周期コントロールのポイントは二つある。一つは、照射時間のサイクル、もう一つは、牛舎内のどこにおいても一定以上の明るさ(照度)であること」と同社の担当者は言う。そこで南北に建てられた塚田牧場の牛舎内を、日の差し込み具合で12ブロックに分けて、この「自動制御照明システム」は設計/施工された。同システムは、以下で構成されている。

・明度センサー(牛舎の北側に設置)
・高圧ナトリウムランプ12個(黄色照明の400W。照射範囲が広く、個数が少なくて済む)
・夜間用照明12個(赤色照明の11W。人間は薄明るく感じ作業できるが、牛は感知しない明るさ)
・濃度ボックス(照明オン/オフの自動スイッチ)
・コントロールボックス(各種の設定)
・制御用コンピュータ(各種の設定と記録)

そして、明度センサーによって、1日のうち16時間は明るく(150ルクス以上)、8時間は暗く(150ルクス以下)となるように自動制御されている。ちなみに150ルクスというのは、新聞を十分に読める明るさ。
「昼間より耳標がくっきり見える。だから牛舎内の仕事は、昼間よりも夜のほうがやりやすいほど」と塚田さんは言う。

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繁殖にも変化が
このシステムを導入して、明らかに変わったこととして、塚田さんは以下をあげる。

①夕方の搾乳量が、朝の搾乳量よりも多くなった。
②繁殖が良くなった。
③牛達が気持ち良さそうに反芻するようになった。

1日1頭当たりの平均乳量も上がったが、それは牛舎自体が変わったことから単純に比較はできない。しかし、①の変化が起こったことで、夕方の搾乳量の増加分が、1日の乳量アップにつながっていると考えることもできるだろう。

②の理由については、牛体や発情粘液などが鮮明に見えて発情観察がしやすくなったことのほか、「発情の発現も強くなった」と塚田さんは言う。照射にメリハリがあることで、明るいときに一気に発情を発現させるようになったことも考えられる。事実、夜間の発情行動は静まっているという。


モチベーションもアップする
このシステムには、もう一つ、想定外の効果があった。それは、「夜明けが遅い時期の朝、牛舎に行くときに、既に牛舎内が明るく点灯しているから、モチベーションがアップする」ということ。「明るいほうへ向かっていくのは気持ちがいい」と塚田さんは言う。

そして、電気代については想定内であることから、費用対効果を十分に認めるとともに、ミルキングパーラーと待機室にも、この照明を付ければよかったという。さらに、「柔らかく明るい照明は、牛だけでなく、人間にとっても気持ちいい。これらの効果は、屋根のある牧場であれば、どの牧場でも実感できると思う」と語ってくれた。





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