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レポート


2014/03/24レポート

オランダ視察レポート前編【酪農マーケット】


2012年11月に搾乳ロボットをご検討中のお客様と一緒に、オランダのLELY社(レリー・搾乳ロボットの開発メーカー)工場と搾乳ロボット導入牧場、ドイツのユーロティア2012(畜産管理技術に関する国際展示会)視察を行いました。
今回は、弊社社員が現地で聞き取りしたオランダの酪農マーケット事情をご紹介します。
※記載の金額は訪問時に聞き取りした金額を元に試算しています。

【コーンズ・エージー本社 営業本部:横浜隆則、国際本部ロボットグループ:小池美登里】
 

視察スケジュール

1日目      オランダへ移動
2日目      レリー社工場見学、牧場視察(2軒)
3日目      牧場視察(2軒)
4日目      ドイツへ移動
5日目      国際展示会EuroTier2012(ユーロティア2012)視察
6~7日目 日本へ移動
 

レリー社工場見学

以前は、マースラウス(オランダ)に全ての工場を構えていましたが、オーダーに対して製造が追いつかないため、農業機械以外の製造工場をロッテルダム(オランダ)に移しました。効率的に整備された工場では、2009年からトヨタの「カンバン方式」を取り入れ、非常に生産効率が高まったということです。

※訪問時はレリー新社屋と新工場を建設中でしたが、2013年末に全て完成し、2014年1月にオープンセレモニーが開催されました。
 

世界的な搾乳ロボットの勢い

ヨーロッパに留まらず、アメリカにもロボット製造工場が新設され、搾乳ロボットの総出荷台数は15,000台を超えるなど、搾乳ロボットの広がりに勢いを感じました。特に、ドイツに勢いがあり、搾乳ロボット21台を導入したドイツの牧場が、現在は世界最大のロボット牧場になっています。(2014年3月時点)

1軒で8台以上の搾乳ロボットを導入する牧場は、アメリカ、カナダ、エストニア、デンマーク、スペイン、オーストラリア、ニュージーランドなどに広がり、大規模なロボット搾乳牧場が世界的に増加していました。

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ヨーロッパの酪農マーケットに大きな変化が

2015年に、ヨーロッパの生乳クオータ制度(牧場別に生産枠を設け、割り当て量を超過した場合は、枠を購入しなくてはいけないEUの生産調整政策)の廃止が予定されています。

クオータ制度が廃止されて乳生産量が増加すると、域内の余剰生産分は、域外への販売で解消する必要があります。
そのため、大手乳業メーカーは合併などによる規模拡大を進め、生産効率の向上や国際競争力の強化を図っているそうです。2015年以降は、ヨーロッパの乳価の変動も予想され、それに対しての政策も国ごとに変わってくると考えられます。
 

訪問時のヨーロッパの乳価は30円台!※1・2

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牧場を訪問した際に、オーナーから色々な話を聞きましたが、どの牧場も、シビアな売上や収益について事細かく教えてくれました。

オランダの平均的な搾乳頭数は70頭ですが、耕作面積に対して飼養頭数に制限があるため、生産枠にも限りがあります。
2012年の乳価は例年並でしたが、牧草収穫期が長雨にあたりサイレージの状態が良くないため、この年の生産乳量は想定よりも低かったそうです。


ある牧場では、乳価36円/ℓ(※1・2)に対して、生産コストが30円/ℓ(※1)。オランダの牧場の一般的な所得は300~400万円と、日本と比較すると、かなり少ない金額になっています。
※1:訪問時のユーロ/円の為替レート104円で計算 ※2:聞き取りしたEU乳価34ユーロ/100kgで計算

オランダは、クオータ制度や耕作面積に対する飼養頭数の制限のため、無制限に牛乳を生産することができません。
そのため、多くの餌代や手間をかけて生産乳量を高める方法ではなく、牛を健康的に管理して長生きさせて、生涯乳量を伸ばすことで利益を残す方法が、オランダ酪農では主流になっています。

さらに、一般的な人件費コストが時給2,000円近くと高額なため、1人当りの生産性を高めるために、オランダでは施設の更新時に半数以上の牧場が搾乳ロボットを選択しています。


副業や夫婦共稼ぎも一般的

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左写真は、視察先の牧場主が営む生鮮売り場です。
オランダでは酪農以外の副業に取り組むことや奥さんが別の職業に就いて働くことが、当たり前に行なわれています。

これも、酪農にゆとりがあるから外部に就労するのではなく、収入を増やすためには、牧場の仕事を極力自動化して外部で稼ぐことが必然という事情がありました。


オランダの牛事情

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この牛は、ホルスタインのレッド?

いいえ、違います。いわゆる「雑種」で、オランダの固有種にホルスタイン種を人工授精して生まれた牛です。

こちらの牧場では、搾乳ロボットの導入前は、ほとんどが固有種でしたが、ロボット導入後にホルスタインの種を使うことで、徐々に「なんちゃってホルスタイン」や「なんちゃってブラウンスイス」が増えてきたそうです。
おおらかなヨーロッパの酪農を感じたひとコマでした。



斬新!カウナンバーの刻印方法

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訪問した牧場で、牛の臀部の黒い毛の部分に、白抜きでナンバリングされている牛を多く見かけました。日本の肉牛で見られる「焼印」ではなく、数字の部分だけ白い毛が生えています。

実は、白い部分は脱色を行なっています。ドライアイスに浸した数字の形のコテを1分間位、臀部に押し当てると、白い毛しか生えてこなくなるそう。
放牧が多いオランダでは、遠目で耳標を確認するのが難しいことから、この方法が多く取り入れられているそうです。

フリーストール牛舎でも、牛を後ろ側から確認できると非常に便利ですね。


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