労働力不足の解消や酪農作業の省力化、飼養管理レベルの向上等を目的に、搾乳ロボットを複数台導入する大規模なロボット牛舎が、欧州・北米を中心に増加し、日本でも注目されています。
搾乳ロボットAstronaut A4を製造開発するオランダのLELY(レリー)社では、8台以上の搾乳ロボットを導入する牧場・法人のために「Dairy XL」という専任のサポートチームを世界に先駆けて立ち上げ、導入を支援しています。
今回は、ベラルーシに次いで、世界で2番目に大規模ロボット牛舎の多いドイツの牧場3軒を視察しました。
2012年から大規模ロボット導入計画を進め、2014年11月に16台のロボットで搾乳を開始しました。「Dairy XL」モデルプランとして紹介されている牧場です。
飼養頭数は1,000頭(視察時は700頭搾乳)、圃場面積は1,400ha(デントコーン300ha、牧草500ha等)です。
Astronaut A4 16台、ミューラー タワー型サイロバルク28t 2基、餌寄せロボットJUNO150 (3台)等が導入されていました。
餌槽通路の両側(牛舎中央)がロボット室になっている4ローダブル牛舎です。片側の2階に管理室と会議室を設置しています。牛舎の広さがお分かり頂けるでしょうか?
1群を2台のロボットで搾り、牧場全体では全8群を16台で搾乳しています。2台のロボットのミルクラインや洗浄ラインが分かれているため、1台が洗浄中でも、もう1台で搾乳を行なうことができます。ロボットの洗浄時間も常時搾乳できることは、複数台ロボット導入のメリットの1つです。
海外でよく見られる、カーフハッチ哺育後に、子牛10頭程度を大型ハッチで育てる群飼い哺育です。哺乳は、移動式のミルクカートで行なっていました。
ファームマネージャー1名を筆頭に全7名の従業員が牧場の全作業を担っています。シフト制で常に5名が働き、1日8時間・週40時間、勤務しています。
わずか5名で700頭を管理するとは驚き!優秀な20代の女性マネージャーを中心に、全員が情報共有しながら効率良く作業を行なっていました。
デスクの上も、とても綺麗に整理整頓され、「さすが」と一同、深く感心しました。
Astronaut A4をL字型に配置し、8台のロボットで約450頭を搾乳しています。ロボットを中央にまとめ、L字型の2台のロボットで1群を搾乳し、牧場全体では4群を飼養しています。日本での4台・8台牛舎はこの牛舎レイアウトを参考にしています。
乾乳牛をロボット牛舎の両端で飼養する、オールインワン型の牛舎です。
管理室はロボット室の2階に設けられています。餌寄せロボットJUNO 100や牛舎自動制御照明システムL4C等が導入され、搾乳以外も機械化・省力化されていました。
また、こちらの牧場でも、タワー型サイロバルクが導入されていました。
オーナーは女性で、従業員は4名体制です。
朝から夕方まで1名、昼から1名、夜の部1名の2交代制で、23時から6時までは基本的には牛舎作業は行なっていないそうです。
続いては、既存牛舎を改造して21台のAstronaut A4を導入した牧場を視察しました。
搾乳用の21台のロボットの他に、搾乳は行なわず給餌のみのトレーニング用として別牛舎に1台もありました(贅沢な使い方!)。
牛舎中央が人と牛の移動通路となり、コンベアフィーダーが頭上に設けられています。
まるで地の果てまで続きそうな?カーフハッチの列。ハッチ番号を見ると、131番まで振ってありました。
ドイツの牧場視察の後は、オランダに移動し、LELY本社や工場を訪問して、日本での大規模ロボットプロジェクトに関するミーティングを行ないました。
今回の視察を終え、仕事をしていく上で「環境」も非常に重要ということを再認識しました。整理整頓が行き届いた16台ロボット牧場の視察では、テンションが上がりました。新装されたLELY新社屋は「こんなところで働いてみたい」と思わせる素敵な建物で、倉庫内も床の清掃が行き届いていました。
「仕事をしやすい環境づくり」ということも念頭に置いて、業務運営にあたって行きたいと感じたことも収穫の1つでした。