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DairyJapan誌「廃棄乳ロスを最小限にする」〜パスチャライザーが大活躍〜

有限会社菱沼ファーム様(北海道阿寒郡鶴居村)

DairyJapan誌「廃棄乳ロスを最小限にする」〜パスチャライザーが大活躍〜

子牛向け設備哺乳機械

パスチャライザー Addaシリーズ

Dairy Tech(デイリーテック)アメリカ

【Dairy Japan 2015年2月号掲載記事】
特集「廃棄乳ロスを最小限にする」誰がやっても同じになるように

有限会社菱沼ファーム 菱沼 和也様、拓郎様、恭平様 ※写真左から
釧路管内・鶴居村の菱沼ファームは兄弟3人が後継。飼養効率や労働効率のアップ、そして良質乳生産、廃棄乳ロスの低減に向けて、抜群のチームワークで取り組まれています。(取材・執筆 Dairy Japan誌)
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搾乳牛は3群分け(?初産牛と治療牛、?経産牛の泌乳前期、?経産牛の泌乳後期)。搾乳牛用TMRは2種類(??用と?用)
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牛床を変更するからには

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生乳の品質向上・維持には各種の要因が絡んでいることから、その取り組みも多岐にわたる。そこで、まずは飼養環境から尋ねたら、増築前のフリーストールは、砂のベッドだったとのこと。「当時、乳房炎は見事に少なかった」と言う。

しかし増築するにあたり、労力面から、牛床マット+敷料(オガクズ)に変えた。それと同時に、乳房炎の新規感染が高まらないよう注力するようにした。具体的には、敷料をマメに補充すること。1カ月に3〜4回、フリーストール前方に専用機械で大量に投入する。また、ベッド掃除は丁寧に行なうこと。ベッドの乾燥を心がけるようにオガクズを敷き入れる。


乳頭洗浄機は重宝

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次に搾乳衛生を尋ねたら、「乳頭洗浄機を導入して以来、乳房炎の新規感染が非常に減った」と言う。
搾乳手順は、前搾り→乳頭洗浄機で乳頭洗浄(お湯+殺菌剤)および清拭(空回し)→1分半後にユニット装着→自動離脱後にポストディッピング→ユニット洗浄(バケツに張った殺菌剤で消毒)。

乳頭洗浄機の利用で、プレディッピングと搾乳タオルが不要になった。しかも、乳頭清拭が「誰がやっても同じになる」ことでも重宝している。


乾乳牛の飼養環境が最重要

さらに乾乳管理について尋ねたら、「乳房炎防除では、乾乳牛の飼養環境を良好にすることが最も大事。乾乳直後、また分娩前後の牛の寝るところが汚れていると、乳房炎になる危険性は非常高い」と言う。「以前に過密気味にしたときに痛感した」と経験談を話してくれた。

乾乳期間は45〜50日。約10頭単位で乾乳のタイミングを決める。該当牛が乾乳予定日になったら、朝の搾乳直後に乾乳軟膏を入れてディッピング。その牛は、戻り通路の仕分けゲートで自動キャッチされ、その後、乾乳牛舎へ移動する。

乾乳牛舎はビニールハウスのフリーバーンで、乾乳前期・後期の2棟ある。飼養密度は計算上30頭だが、前期群は22頭ほどが理想だという。冬期以外はパドックに出入り自由にしている。分娩3週間前になったら後期群へ移動する。後期群も前期群と同じスペースなので、飼養密度はゆったりだ。分娩はそこでする。
「この乾乳牛舎ができて、乳房炎が見事に減った」と言う。また、「乳房炎になっても治りが早い」とも。

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パスチャライザーは大活躍

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菱沼ファームの生産ロスを減らすことに大きく貢献しているのが、パスチャライザーだ。平成25年6月に導入した。

同牧場のパーラーミルカーはミルクラインが2経路、つまりバルクへ送る主ラインと、移行期乳やを別取りするラインが備わっているタイプ。このように別取り乳を確保しやすいことも手伝って、パスチャライザーの導入に迷いはなかった。

搾乳が終わって樽に受けた別取り乳はバケットに移され、カーフハッチのそばにある哺乳調製室へ運ばれる。そこにパスチャライザーがあり、それにより、別取り乳は63℃・30分で低温殺菌された後、自動冷却され、そして哺乳前に適温(約40℃)に温めてキープされる。

殺菌する開始時刻、哺乳のために温める開始時刻は、その牧場の作業に合わせて、事前にプログラミングしたタイマーで自動稼働する。つまり、哺乳作業の時間に合わせて、殺菌されて適温の哺乳ミルクが出来上がっている。
ここでも「誰がやっても同じになる」ことで重宝している。


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ミルクの給与量は1日1頭当たり最大3L×2回。ミルカーのミルクラインが2経路あり、移行期乳を別取りするラインが備わっているタイプなので、別取り乳の確保が楽。
樽に受けた別取り乳はバケットでパスチャライザーへ運ばれる。パスチャライザーで、移行期乳は63℃・30分間加熱後に自動冷却される。稼働開始時刻はタイマー設定されている。
パスチャライザーをうまく使うコツは、「洗浄は丁寧に行なうこと。とくにコック部分は重点的に」と言う。

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経産牛の初乳はアルミニウム製の専用バッグ(3L、4L)に入れてパスチャライザーで殺菌。60℃・60分間加熱後に自動冷却される。その後、冷凍保存する。
子牛が生まれたら、冷凍保存していた殺菌済みの初乳に初乳製剤を加え、免疫抗体量を高めて与える。低温殺菌した初乳や移行期乳の利用は、子牛の衛生・健康の向上、そしてロス削減になっている。

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■左:乳頭自動洗浄機。前搾り後、これで乳頭洗浄(お湯+殺菌剤)および清拭(空回し)するので、プレディッピングと搾乳タオルが不要になった。
■右:32ストールのロータリー式ミルキングパーラー(デイリーマスター)。「独自構造の小型クローがライナースリップを防止することも乳房炎防除につながっている」と言う。

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乾乳牛舎はビニールハウスのフリーバーン。前期群・後期群の2棟が並列している。汚れが気になったら寝ワラ(低品質の乾草)を積み足して補充していく。ベッドが発酵しているので、堆肥出しは1年に1回。
飼槽通路の除糞は1周間に1回。夏期は、遮光ネットを広げ、横壁を明け、換気扇で暑熱対策を図っている。

菱沼ファームの今後の経営展開は、育成の飼養施設を整備することを当面の課題としている。もちろん生産量を増やしていくことを常に念頭に置きながらである。

取材=Dairy Japan http://www.dairyjapan.com/





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