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DairyJapan誌「ここが知りたい搾乳ロボット」〜搾乳回転率を上げる〜

岩田牧場様(北海道紋別市)

DairyJapan誌「ここが知りたい搾乳ロボット」〜搾乳回転率を上げる〜

アストロノートA3Next 2台導入
稼働年度:2011年9月・10月

労働人数:4名、雇用2名
飼料畑面積:牧草75ha、コーン40ha

【DairyJapan 2014年7月号掲載記事】

特集「ここが知りたい搾乳ロボット」

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搾乳回転率を上げる 「牛がロボットに入りさえすれば絶対にうまくいく」

北海道紋別市 岩田牧場 岩田 博教様

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岩田牧場 岩田博教様(左)
弊社 興部支店 片山北斗(右)

【牧場概要】
■搾乳ロボット:レリー アストロノートA3 Next 2台(2011年9・10月稼働)
■飼養頭数:搾乳ロボット牛舎:搾乳牛125頭、併設の乾乳牛舎に乾乳牛18頭
         既存の繋ぎ牛舎:搾乳牛47頭、既存の乾乳牛舎に8頭
         未経産牛100頭

■ロボット牛舎:2011年新築、搾乳ロボット1台に66ベッド、3ロウ、フリー・トラフィック※
■栄養管理:乳量22kg設定のPMR※+搾乳ロボット内での濃厚飼料、PMR調製は1日1回(夏場は2回)混合して朝に給飼

※【フリー・トラフィック】=どこにでも自由に行き来できる通行
※【PMR】=TMRから濃厚飼料を少なくしたもの。PMRだけでは栄養が充足されないので、搾乳ロボットに入って濃厚飼料を
食べたいというモチベーションを働かせる


搾乳ロボット導入の背景は?

既存の搾乳牛舎は83頭繋ぎで、搾乳ロボット導入前には90頭くらいを入れ替え搾乳しながら年間約900搾っていた。その当時から雇用スタッフを入れていた。最小労力で最大生産を達成すること、労働効率を上げることを考え、搾乳ロボットを導入した。

やるからにはスタートダッシュが大事だと思っていたので、搾乳ロボット導入年6〜9月の4カ月間で73頭の初妊牛を購入した。それプラス自家産の初妊牛20頭が分娩して、稼働2カ月後には牛舎はいっぱいになった。


搾乳ロボットを導入するに際して牛舎を新築した理由は?

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当初は既存の育成牛舎を改造して利用するという案もあった。
しかし、やるからには失敗は許されないし、絶対に成功させるという強い思いが自分のなかにあった。だからシステムをうまく設計するうえで妥協が生じないように牛舎を新築した。

牛が搾乳ロボットに入りさえすれば、絶対にうまくいく。そのためには、牛が搾乳を嫌がらない設計にしなければならないし、それに対する投資は惜しまなかった。

乾乳牛舎は既にあったが、新たに搾乳ロボット牛舎に併設した(左図クリックで拡大)。乾乳牛の移動距離を少なくしたかったから。そうすることで牛達は、この牛舎内で生涯を過ごせるようになった。


搾乳ロボット導入時に、牛を慣らすためにしたことは?

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初産牛のほうが物覚えが良いと聞いていたから、先述のように73頭の初妊牛を一気に導入して、初産牛を多くした。ロボット搾乳スタート時点で、120頭中100頭が初産だった。

導入当初は、牛達がロボットに慣れるように、ひたすら誘導した。それは2カ月ほど続いた。今であれば、新しく上がってきた牛は先輩の牛の行動を見習って覚えるのだが、当初はほとんどの牛が初めての経験だったから。

当初のその誘導作業は大変だったが、それを乗り越えたら、搾乳ロボットでの飼養管理は想定していたよりも、はるかに楽なものであることを実感した。


(写真)搾乳ロボット前のスペースは推奨よりも60cm広く、6.0mにした。そのほうが混まず、牛は搾乳ロボットに入りやすい


搾乳回数は?

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先日まで1日1頭当たり平均3.2回だったが、今は3回ほど。搾乳ロボット1台
1日当たりの平均回数は170回以上から160回程度に下がった。
理由は、自給粗飼料が不足してアルファルファ乾草をPMRに入れたから。
そうすると飼槽のPMRで満足してしまい、搾乳ロボットに行かない牛が何頭か出てくる。


ちなみに搾乳回数の最多は1日5回。搾乳ロボットに行かない牛は朝夕追うので最少は2回。
(写真)搾乳ロボットの出口で蹄浴。そこにフットバスを置いても牛が滞ることはない


搾乳間隔が空く牛は、どのような牛で、何頭いて、どのように対処している?

搾乳ロボット内での配合飼料の給与量が、泌乳中期から徐々に減るので、泌乳中・後期の牛でロボットに行かなくなる傾向がある。搾乳間隔が空いて、朝夕誘導しなければならない牛(搾乳待機ゲートに誘導する牛)は、今は1台につき3頭くらいだが、他にも搾乳間隔が長めになっている牛も含めて7頭くらい追っておく。そのほうが次の仕事に移れるから。

自分は朝4時20分に搾乳ロボット牛舎に来る。コンピュータ画面を見て、搾乳間隔の空いている牛をチェックして誘導する。
午後は2時にコンピュータ画面を見て同様に誘導する。もし、いつもと違う牛がいたら、その牛は乳房炎か、他の病気か、どこかおかしいと判断する。

搾乳ロボット1台当たりのフリータイム(搾乳されていない合計時間)は、今は1日約5時間。深夜から朝5時頃までは牛があまり動かず、1時間に数頭しか入 らない。そこで、当初は朝5時に牛舎へ来る予定だったが、少しでも搾乳回転率を上げるために、朝4時20分に来るようにした。 

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以前は、搾乳ロボット2台ともフリータイムが約50分になったことがあった。
そのときは1台1日当たりの搾乳回数は190回弱で、深夜でも途切れることなく牛が入っていた。
しかし、フリータイムは3時間くらいあったほうが良いと思う。何かトラブルが発生したときに一気に回転率が落ちて、牛達に支障が起こりかねないから。

(写真)手前はキャッチ牛エリア。夜中2時から昼11時までに活動量が多く強かった牛を、個体セパレートゲートで自動キャッチする


洗浄回数と洗浄時間は?

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1日3回、6時・14時・22時、8時間ごとに自動洗浄される。搾乳フィルターは朝晩(1日2回)交換する。洗浄時間は20分くらい。
その時間を利用して、ロボット本体や床、周囲も洗浄する。日中も汚れが気になれば、その都度、洗浄している。

【コーンズ・エージーより】
搾乳フィルターを交換するときは、ミルクラインの中には乳が溜まっているのでボタンを押してエアを送ってライン内の乳をバルクへ送ってから交換する。

Q 搾乳がしばらく空いたときのミルクパイプ内の衛生管理は?


【コーンズ・エージー】
先述のように、洗浄時間以外は、搾乳ロボットとバルククーラーの間のミルクラインには常に乳が入っている状態なので、ライン内が乾くことはなく衛生的である。
また、もしトラブルなどで搾乳時間が空きすぎると、自動的にライン内の乳は廃棄されてライン内は洗浄され、再スタートする。


集乳車が来たときのバルククーラーの仕組みは?

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容量5tと4tの2台を使い、毎日集荷なので、その都度切り替える。


【コーンズ・エージー】
バルククーラーを2台置いていただき、集乳ごとにバルクを切り替えてもらう。ローリーの運転手さんがバルブをひねるとバルクが切り替わるようになっている。


停電のときの対応は?

この地域は送電条件が良いので、停電は心配していない。実際、搾乳ロボットを導入して以来、停電は一度もない。
もし停電してもすぐに復旧するので、発電機は装備していない。

【コーンズ・エージー】
停電になると搾乳ロボットは停止する。復旧したら、搾乳ロボットの調整などは不要。まず洗浄から始まる。


強い牛・弱い牛が見られるのは、どの場面で、その対策は?

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飼槽にPMRを給飼したときに、強い牛達はPMRを食べに飼槽に来る。弱い牛達は、そのタイミングを見計らって搾乳ロボットに入る。

エサ寄せロボットが動くときも同様だ。エサ寄せロボットはピーと音を発してから動くので、それが鳴ると、搾乳ロボットのそばにいつもいる牛達は飼槽へ行き、弱い牛達はロボットへ行く。だからエサ寄せロボットのピーという音は重要だ。


搾乳ロボットの出口付近に強い牛がいることはあるが、搾乳が終わった牛はすぐに出て行くので、それで困ることはない。

(写真)PMRは乳量22kg設定で、泌乳ピーク牛は搾乳ロボット内で1日最大8kgの濃厚飼料を5回に分けて食べる。
エサ寄せロボットが動き出すと、強い牛達は飼槽へ行き、弱い牛達はロボットへ行く。

搾乳ロボットに牛がよく入るためのポイントは?

栄養面では、先述のように、飼槽のエサ(PMR)の嗜好性や濃度が常に一定していること。
牛舎設計面では、搾乳ロボットの前のスペース寸法が大事。一般的には5.4mだが、うちは6.0mにした。そのほうが牛は搾乳ロボット入りやすい。このスペースが広ければ、方向転換してエサを喰いにも行けるし混まない。

また、水槽の個数と位置にもこだわった。飲水量が十分でなければ、搾乳回転率が落ちるし、乳も出ない。60頭の牛に対して
4個の水槽を設置した。とくに横断通路には2個の水槽を並べて設置し、その周辺のどこからでも水が飲めるようにした。

牛の性格面では、搾乳ロボットに絶対に入らないという牛はいない。初めは入らなくても、辛抱強く誘導してあげれば、そのうち必ず入るようになる。


蹄病予防はどのように?

搾乳ロボットの出口にフットバスを置いて蹄浴している。3日間蹄浴したら4日間休むというサイクル。フットバスを置くことで牛が滞ることを最初は心配したが、心配無用だった。
削蹄は4カ月に1回。毎回全頭を削蹄する。そのとき蹄病(趾皮膚炎)で処置するのは4頭ほど。予防効果がキープされている。


乳質管理で大切なことは?

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ベッドを常にきれいにしておくこと。オガクズを多目に入れるようにしている。

また、うちは夕方5時に仕事が終わり、翌日の朝4時20分まで牛舎内は無人となるが、昼間は5回以上(2〜3時間に1回)、ベッドの除糞をしている。

(写真)ベッドは牛床マット+オガクズ(消石灰を混合)。昼間は2〜3時間おきに除糞する。牛体は非常にきれいだ。


導入機種には多くの機能があるが、そのなかで重宝しているものは?

牛の動きの速さ・激しさを計測するモーションセンサーと、それにより発情発見した牛を分離する個体セパレートゲートが、繁殖管理で重宝している。発情が微弱でも発見されることから繁殖成績は順調。
ほぼ1年1産で、3年前に初妊牛を一気にしたことから、今もいわば季節繁殖のようになっている。


搾乳ロボットを導入して、生産性はどのくらい向上した?

ロボット搾乳牛群は平均乳量1万1000kg以上。1万kgから1000kgアップしたというイメージだ。
泌乳最盛期の牛が多い時期は1日1頭当たり38kgで、先述のように繁殖成績も良好にキープされている。
また、廃棄乳が少ないし、頭数は2倍になっても診療代は減った。

 当初の計画では、ロボットで搾った利益で負債の償還や人件費をまかない、繋ぎで搾った利益で生活できれば良いと考えていたが、今は、搾乳ロボットの生産だけでも十分にいける手応えだ。


搾乳ロボットを導入して、労働面・労働の中身はどのように変わった?

ロボットで搾乳作業はなくなるが、飼養頭数が2倍になったので、観察作業の仕事が中心となった。

また、繋ぎ飼養のときは朝夕の作業がメインで昼間の作業は少なかったが、今は逆。
朝夕の作業が少しで、昼間の作業がメインという感じだ。夕方の作業は5時には終わる。
雇用スタッフも家族も週1回休む。


今後の経営展開については?

今の雇用スタッフで、搾乳ロボットをもう1〜2台増やして規模拡大しても十分いける。
しかし、問題は、自給飼料の確保と糞尿処理。したがって、息子が継ぐならば、そのときに更なる規模拡大を考えることにして、それまでは土台を固めておく。

取材=DairyJapan http://www.dairyjapan.com/





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